六月の風はどこから吹いてくるのだろう。
あの山の向こうからか。
あの谷の向こうからか。
夏のような太陽は気温とともに僕の気持ちも上昇させる。
今日だって、始めて魚釣りをした時と同じくらいにドキドキする。
本当は始めて釣りをしたときの事は覚えていないけど、このドキドキは
いつまでも変わらないのだと思う。
だからはじめての時からこのドキドキなんだ。
そんなドキドキをのせてフライは空を飛んで行く。
六月の風にのって。
なんてしあわせなんだろう。
そんな事を素直に感じてしまう。
いつも。いつも。
そりゃあ、青空の下ならしあわせ以外にはないよ。
そう、魚がつれなくてもね。
でも、魚が釣れたら?
そりゃもっとしあわせだ。
しあわせはなにやらいっしょうけんめい食べている。
ときどき水面に顔を出しながら。
いい感じに流してやってもしあわせはなかなか振り向かない。
しあわせをつかまえるのはむずかしい。
何度も何度も流し続ける。
ようやくとしあわせが飛び出した。
「ちょっとした気まぐれだよ。」
そんなふうに顔を見せた。
それでも僕はとびきりしあわせだ。
だってこんないい風が吹くなかで君に会えたのだからね。