背丈近くまで伸びた草をかきわけて
澄んだ風が吹き抜ける小さな流れに向かった。
今日は新しいロッドのデビューの日だ。
赤のスレッドで小粋に巻き上げられたショートロッド。
岩手のロッドメーカー「カムパネラ」のものだ。
いつもより短めのティペットにアントを結びキャストする。
ラインはすっと伸びていき、小さな影が流れに浮かぶ。
小さなしぶきをあげて飛び出したのは美しいイワナだった。
記念すべき第一号。
これからいろいろな川にいき、たくさんの魚に出会うのだ。
どうぞよろしくお願いします。
そうそう、盛夏の頃には一緒に里帰りをしてあの川に行こう。
小さな雨蛙。夏のイワナの腹にはたまに雨蛙が入っている。そして子供の頃に釣りに釣れていってもらったおじさんは、雨蛙で大きなイワナを釣っていた。
イワナは本当になんでも食べる。
ようやく熟してきた桑の実。
口に入れるとさわやかな酸味とともに懐かしい思い出がよみがえる。
子供の頃は舌が真っ黒になるほど食べたものだ。
夏の思い出の味。
美しい花。
自然の造形は人間の想像をはるかにこえる。
静かに咲き誇るその花は言葉にできない美しさを放つ。
こんな花に出会える日は本当にしあわせだ。